3 26, 2014

The Culture of Shame

Room #4 Editorial Note カルチャーの壁を超える by 稲葉 直幸 トレンパーのインタビュー記事「侮辱の連鎖」の原題は「Changing the Culture of Shame」です。直訳すると「侮辱の文化を変える」ですが、ここでの「カルチャー」は米国の「文化」というより個人の「教養」の意味合いで使われています。 もっとも「The Culture of Shame」自体はテーマの一部であり、本題は雪山事故の被害者が社会に向けて声を上げやすい環境づくりにあります。 この場合の社会とは、ブログやフォーラム、SNS等のウェブ空間も含まれます。例えば雪崩被害者の聞き取り調査にさいして「意思決定を批判しない」「審判役にならない」というユタ州雪崩センターのポリシーが紹介されていますが、この原則は神視点からの物言いが幅を利かすネット社会でも当てはまるものです。 事故当事者の善意による情報共有はその性質からして無防備です。判断ミスを告白するようなもので、「愚かな自分をさらけ出す」(「グリズリー・ガウチ・アバランチ!」)ことに他なりません。ともするとネタの燃料投下とみなされ、誹謗中傷の攻撃にさらされます。 ネガティブな過剰反応をおそれて当事者が沈黙すれば、私たちは失敗から学ぶ機会を失います。これでは将来起こりうる同じシチュエーションでの事故予防に役立てることができません。トレンパーが言うように解説者気取りの批判は「非生産的」ですが、それ以前の問題として当事者が声を上げなければ何も生まれません。 こうした負のスパイラルを断ち切るためには、まずはネガティブな反応を止めようというわけです。一方、私たちは事故から学ぶ知性を持っています。事故予備軍でもある受け手側も謙虚になるべきだという訴えを行間から読み取ることもできるでしょう。 真っ当な主張ですが、国内では通用しません。そもそも日本社会では当事者自らが体験談を公の場で語ることは稀な現象であるうえ、こうした日本人のリスク回避行動は個人の資質ではなく社会環境に依存するものだからです。 日本社会では、ミスはネガティブなものとして一面的にとらえられ、小さなミスでも許容しない土壌があります。したがって(米国社会よりも)失敗リスクが高く、リスク回避的な行動が社会生活の中では最適な戦略となっています。 こうした社会的な行動の選択のための初期設定を社会心理学者の山岸俊男は「デフォルト戦略」という仮説で説明しています。デフォルト戦略とは、どの選択がその場で適切なのか不明なときに選ぶ無難な選択のことで、日本人にとって無難な行動とは「まわりの人から非難されたり嫌われたりしない」(山岸俊男/メアリー・C・ブリントン『リスクに背を向ける日本人』)ことです。 一方、米国人は非難されても新しいチャンスがあると考えるなら自分の意見を主張する方が無難な選択となります。セカンドチャンスの大きい米国社会の中ではそれが賢い行動原理だからです。 雪崩事故のレポートや動画をウェブにアップする行為の結果には、リターン(建設的な意見交換、自己主張の機会、知名度や評価の獲得など)とリスク(ネガティブなレスポンス)がありますが、実際にどんな反応が起きるのかはっきりしません。こうした見通しが不透明な場合、当事者はデフォルト戦略に従って選択を行います。 米国人はポジティブな選択、日本人はリスク回避の選択をする傾向が実験から分かっています。どちらの選択が優れているかという優劣の問題ではなく、日本社会では自己主張をしない戦略つまり横並びの処世術の方がよく機能するということです。 行動原理のルールが異なれば、米国社会のように「謙虚になろう」と個人の倫理に訴えても、日本人スキーヤーの行動様式(エートス)は変わりません。国内の立入禁止ロープを潜る外国人に日本のロープの倫理を説いてもスルーされる結果と同じです。 日本の社会環境は変わらなくとも私たちは外国の事例から学ぶことができます。今回紹介した二つの雪崩事故は米国で起きたものですが、二人の言葉は日本人でもすんなり共感できるのではないでしょうか。 カルチャーは違っても同じヒューマンです。何本もトラックの入ったオープン斜面に誤った安心感(false sense of comfort)をおぼえたイーストヴェイルのエドウィンのメンタリティは日本人でも理解できるものです。 社会環境が違ってもヒューマンファクターは共通です。絶好の撮影日和に誘われて予定外のバックカントリーに出かけたエイミーのテンションは日本人でも納得できるものです。エイミーやエドウィンは明日の私たち自身ともいえます。 あるいは、「つまんないものなら自分の身にも起きることだと思いながら読んでくれないわ」とエイミーが言うように、情報の羅列から物語に昇華したものに私たちの興味は惹かれます。そこに言語の壁はありません。 翻訳記事を掲載するにとどまる今号の体裁は残念なものですが、なんら恥じることはないと思っています。小説、映画どういう形であれ普遍的な物語は自ずとカルチャーの壁を軽やかに跳び越え、私たちの中にもある「The Culture of Sha… Read more

3 26, 2014

視聴覚室 #2

Room #4 Video Room For a waiting game by 稲葉 直幸 WHITER ROOMおすすめ動画コレクションその2 Ian follows Neil ある日 森のなか♪ ナチュラル・ハーフパイプに 出会った 雪積もる 森の中 ナチュラル・ハーフパイプに 出会った イアンさんの いうことにゃ♫ ニールさん お先にすべりなさい パフパフ モッフフッノサ パフパフ モッフフッノサ Tiny House Tour 2014: Episode Three - Best in Snow オレのバディがいちばん! 黒髪ロングに亜麻色ショート。痩せ型、ぽっちゃり、筋肉質。やんちゃ、従順、快活。いろんなタイプのコが登場するアイドルPV。 新雪を一糸纏わぬ姿で駆けまわる姿をご堪能ください。 Working For The Weekend 3 - White Mountain Chutes 週末戦士のみなさまへ。 日々の仕事や家事をこなした先に待つ週末。全てのタイミングが合致し、ミッションを達成したときの充足感。目の前のパウダーを日々追いかけるバムどもには得られないものです。時間は有限だからこそ貴重。このことを一番知るものは週末を恋焦がれる者だけかもしれません。 仕事や家事の合間に準備を整えて臨む先がたとえ黄砂のシュートにあっても幸(シルバーライニング)あらんことを。 YLESKI ノーズバターとビッグホーンに取りつかれた男のショートムービー。 その偏執っぷりは、スキルやスタイルの自己主張というよりYLE(4Frnt)の存在意義を証明せんがためなのでしょうか。もしそうならば、ファーストネームを冠したシグネチャーモデルとは、誕生と同時に自己言及の呪いをかけられた代物なのかもしれません。 Dub Tales Ep. 7 Retallack with Orage オレ様ワールド全開の新雪スラッシュターンPOVは腰も年季も入ってます。自意識ダダ漏れながら最後まで観られるのは、さすがPOVマスターの面目躍如といったところでしょうか。 Blackout レベルストークのピローとアラスカのウォールをめぐるコルストンVBの最新フラッシュバック・メモリーズ。 「中盤のクラッシュシーンでシーズンオーバー。・・・タイトルの由来はモノクロ映像のパートからでもあるし、実際に自分の身に起きたことでもある。それと本作では生の矛盾性を観る人の意識下に訴えたい。人間が生きるには理想的とはいえない環境のなかに滑走ラインの全ての要素が詰まっている。アラスカへ飛んでドリームラインを滑る価値はそこなんだよ」 4th Annual Pain McSchlonkey Classic | SHORTER Official Trailer 世界一のスノーブレード乗りの名をかけて死闘を繰り広げるPain McSchlonkey クラシック恒例のパロディ予告動画。 シリアスな眼差しはジェレミー・ジョーンズ三部作にも負けてない?いちいちツッコミながら観ると愉しさ倍増です。 ゴールデンソーサーを狙うスノーブレイダーの猛者その1、猛者その2、猛者その3。 CHAMONIX LOCALS SCORE AN ALL-TIME DAY ON THE PLEASURE DOME | SO FREAKING EXTREME, EP.10 新雪のオープンバーンを追撮りするときのジレンマ。ハイスピードで滑る被写体を大きくフレームに収めたい。近寄るとロングターンで立ちこめる雪煙に視界が遮られて危険。 POVマスターのネイサン・ウォレス(シャモニー住在)の答え 斜め後方のポジションをキープしろ(難易度★★★) 煙チューブライディングを狙え(難易度★★★★★) ライン交差するときは雪煙の空隙に突っ込め(難易度★★★★) 雪煙の流れる方向を読め(難易度★★★) ゴーグルに付着した雪は高速フィンガーワイプ1回で拭き取れ(難易度★★★) 雪崩れたらあきらめろ(難易度★★) Spring Break - Salomon Freeski TV S7 E11 スプリング・ブレイク。春休みの乱痴気騒ぎで鬱屈した日常を破壊する行為のみならず。 スキーヤーのスプリング・ブレイクとは。 春の湿った新雪をエッジで破壊する行為 バックフリップで世界の秩序を反転する行為 イレギュラーな道具で固定したスキー観を変える行為 チェアスキーのスプリングをき… Read more

3 26, 2014

視聴覚室 #1

Room #4 Video Room For a waiting game by 稲葉 直幸 WHITER ROOMおすすめ動画コレクションその1 Random Shots - Candide Thovex and Aziz Benkrich スキームービーに「ある視点」賞(カンヌ国際映画祭)があるなら、間違いなく最有力候補のPOV。受賞理由は「伝統的なターン概念の破壊と再生を奇声だけで豊かに表現した功績」 新雪ツリーランやピローラインでスピードを追求するなら、従来の「ターン」の概念は通じません。そこには一見すると弧と呼べるようなものはないからです。 Bella Coola Gnar Segment 『Into the Mind』からのフルセグメント。 本セグメントの章タイトルは「異界への越境」。ダウンクライムを拒否し、滑降を選択したミスター・パープル(本作の架空の主人公)の前途には地獄めぐりが待っています。その前章となるのが本章。使用楽曲を含め滑走シーンは祭りの高揚感にあふれ、念願のラインに挑むミスター・パープルの心理描写と見事にオーバーラップします。 断崖絶壁の主稜線に立つスキーヤーを真上から俯瞰したショットは、異界とのボーダーの暗喩でしょうか。 NOT POWDER SKIING, IT'S SHT-FCK SKIING | LIKEBOMB SKIING, EP.1 パウダーがなくても泣き言いうな!ロックしやがれ! 昨シーズン味をしめた12月ディープパウダーの再来を期待して訪れたスイスの“天使の山”エンゲルベルク。クルーを待ち受けていたのは岩肌むき出しの”クソッたれ”な積雪。 必須装備:開放値21のビンディング、メタル入りスキー、頑強な足腰、デアデビルなスピリッツ 24 Hours in Freeskiing - Salomon Freeski TV S7 E08 三つの異なる場所の24時間を同時進行的に追ったショートドキュメンタリー。 同じスキーヤーでありながら目的や環境、対象は異なる三者。同じ24時間でありながら時間感覚は異なる三つのロケーション。 三者三様の物語を生み出すことで、「フリースキー」の多義性を1つの画面内で見事に表現しています。 Sashimi Gold 世界のニセコ。 昼はゴールドクラスの粉雪に酔いしれ、夜は金印の粉わさびで酔いからさめる。(超訳) Super Mom - Salomon Freeski TV S7 E09 「1996年から2004年の間ウェンディ・フィッシャーは女性ビッグマウンテン・フリースキーヤーの名声をほしいままにした後、二人の子どもをもうけた。それから約10年後、彼女の元を訪れた。あの頃の”ウェンディ”に会いに」 台所で挽き肉をこねながら自分のスキーキャリアを振り返るウェンディ・フィッシャー。視線は庭でスキー遊びをする子どもたちから離れない。その姿にスキーポルノのミューズだった頃の面影はない。10年の時が経ち、生活も環境も変わった。 「まだやれると思ってるわ。子どもがいても歳をとってもマインドセットはあの頃と同じよ。信じられないでしょうけど。私が言ってることが正しいか証明してみせてもいいわ」 10年経っても変わっていないものを探す小さな旅が始まった。 急斜面へのファーストドロップに少したじろぐウェンディ。 「子どもたちの顔が頭に浮んだ?」 「少しはね。でも今は自分のことで精一杯よ」 "Make them proud. ママに勇気をちょうだい。" Unfiltered Skiing E02 - Revel strange 日々アップロードされる数多のスキー動画。限られた時間内で全ての作品を観ることはもはや不可能の域。未再生のプレイリストが溜まった状態で、ソロプロジェクトのウェビソードで11分という尺は長すぎ。「ヤコブ・ウェスター」「アルマダ」「レベルストーク」のタグがフィルターにかからなければスルー必至です。 気まぐれで再生ボタンをクリックしても最初の1分間で"stoke"しなかったらスキップボタンをクリックするだけ。 この作品に限っていえば、最初の3分間はタッチパッドから手を離しておくことをお薦めします。「strange」はダブルミーニングだと驚きをもって知ることができます。 Sweet Pr… Read more

3 26, 2014

ハクバ・バイヤーズ・クラブ

Room #4 Movie 生きたいなら中指立てろ! by 稲葉 直幸 IMAGE BY Anne Marie Fox / Focus Features 映画『ダラス・バイヤーズ・クラブ』 1985年ダラス。ロデオと女遊びが生きがいの電気技師ロン・ウッドルーフはエイズを発症し、余命1ヶ月を宣告される。効果のある国内未承認をメキシコから密輸しエイズ患者相手にひと儲けを企む。毛嫌いするゲイのエイズ患者レイヨンと手を組み「ダラス・バイヤーズ・クラブ」を立ち上げるのだが・・・。 『ダラス・バイヤーズ・クラブ』公式サイト 空想実験ハクバ・バイヤーズ・クラブ 20XX年、雪崩死亡事故の増加を背景に国とスキー場が結託して「雪山安全衛生法」が成立。バックカントリースキーは「危険スポーツ」として全面禁止に。登山ゲートは鋼鉄の門で閉ざされ、スキー場の境界線には電流鉄条網が張り巡らされる。裏山からトラックが完全に消え去り、真のユートピアが出現する。 法施行から3年後。生活にハリがなくなり、食欲不振と慢性的な下痢で恥辱とクソまみれの人生に一転。かつての栄光の日々を取り戻すべく、憲法13条で定められた「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」を行使し雪山に不法侵入。バディは自動操縦装置付きドローン(積載可能重量:0.5トン)。 ほどなく「脱法ドローンスキー」に需要があることが分かり、趣味と実益を兼ねたビジネスとしてハクバ・バイヤーズ・クラブをアンダーグラウンドで設立。売り物はクラブの会員権。ドローン乗車は無料。パチンコと同じ脱法ロジック。 サービスは輸送のみ。「対空ロケット弾砲撃でドローンが墜落しても文句ありません」の紙切れにサインをもらったら、任意のドロップポイントで降ろして後は好き勝手にどうぞ。アラスカ黄金時代の再現。 ウハウハに儲かる。 で、客足が遠のいた地元スキー場と面子を失った当局がクラブを潰しにかかる。 どーするオレ? プランA:両手を上げる クラブを解散。自分ひとりでこっそり愉しむだけならこの先もアンタッチャブルに滑れる。恥知らずのレッテルに目をつむれば。"No friend on a powder day." プランB:中指を立てる 悪法と不正に憤慨。当初の私利私欲はちっぽけなものに。雪山解放に向け、趣味の範ちゅうを越えた使命感に燃える。"Powder to the people." 「ファッキュー!」by ウッドルーフ 稲葉 直幸/medium@Naoyuki_Inaba 今シーズンの恥ずかしい思い出。フラット林道をかっ飛ばしてたら雪で隠れたヤブにスキーを引っかけて左膝を捻挫。年末年始の新雪デイをちんたら滑る羽目になる。 WHITE ROOMのテキストは クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。   Room #4 コンテンツ一覧… Read more

3 26, 2014

高嶺の鞄

Room #4 Chat Room チェーン・マッキー、14万円の値札にモノ申す by 稲葉 直幸 来季ピープスから登場する雪崩エアバッグ(ブラックダイヤモンド製ベースユニットJetforce搭載)の価格が判明しました。予定価格で14万円なり。 この価格設定についてプロフェッショナルダミーのチェーン・マッキーに聞いてみました。 Q:本体価格14万円とのことですが。 チェーン:「年収400万円(30代の平均年収)以下の身には高すぎるわー。週給1億円稼ぐウルフ・オブ・”クリフ”ストリートな身分ならプライベートジェットでTwitterフォロワーさんの分まで全在庫買い占めに行くところだけど。コーガン・・・睾丸無恥なカネの亡者も悪くねーな。ちょ待て、ランニングコストは充電代だけってこと?ならオイラ実質ゼロだわ。プライベートカーにサブバッテリー積んでっから」 メーカー別ランニングコストの比較 一回の展開にかかる費用 BCA Float 3,675円(エアの再充填と使用済みパッキン交換)/キャラバン 本体価格(フロート32)114,450円(含カートリッジ) *スノーパルス製ユニットのフェリーノもほぼ同額のランニングコスト ABS 9,450円(カートリッジとトリガーの購入)/UPLND 本体価格(Vario 30)137,550円(含ベースユニット+アクティベーションキット) テスト展開の実践的メリットについて(「明日に向って撃て!」) Q:プロフェッショナルダミーの矜持として購入するのはアリですか? チェーン:「画期的なのはイイけどさ、誰だって不具合やらトラブルはイヤだよな。人柱が仕事だからって、喜んで人柱になると思うなよ。まーアフターケアがしっかりしてれば良いことだから、モノの信頼性と価格は本来別問題だよね」 リコール情報 BCAフロート・トリガー(11/12及び12/13製)のパーツ不良/キャラバン ABSワイヤレス起動装置の不具合/ABS スノーパルス/マムート・エアバッグユニット(11/12及び12/13製)の組立て不良/Mammut スノーパルス・カートリッジ(10/11シーズン以前)圧力ゲージの欠陥/Snowpulse Q:命が助かるなら10万円なんて安いと言う人がいますが。 チェーン:「それを言ったら100万円でも安いわ。『GUARANTEED TO KEEP YOU ALIVE™』のタグが付いてるなら話は別だけど」 マジックナンバー97の真実(「エアバッグと生存率) 稲葉 直幸/medium@Naoyuki_Inaba 今シーズンの恥ずかしい思い出。フラット林道をかっ飛ばしてたら雪で隠れたヤブにスキーを引っかけて左膝を捻挫。年末年始の新雪デイをちんたら滑る羽目になる。 WHITE ROOMのテキストは クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。   Room #4 コンテンツ一覧… Read more

3 26, 2014

侮辱の連鎖

Room #4 Opinion ブルース・トレンパーに聞く雪崩事故の被害者と社会 text by スキーヤーやスノーボーダーが雪崩に巻き込まれて埋没あるいは死亡する事故が起きると、犠牲者や生存者を侮辱する言葉や辛辣な批判がたびたび横行する。オンラインフォーラムやソーシャルメディア、個人ブログでよく見られ、大抵の場合次のような意見に集約される。「雪崩にあって当然。アホか」。こうした反応は事故のプロセスや背景を明らかにする上で、さらには物事をオープンに議論する社会の発展の妨げとなる。当然ながら当事者は事故を語ることや事実をシェアすることに二の足を踏む。 ユタ州雪崩センターのスタッフはこうしたカルチャーを変えようと懸命に働いている。雪崩事故の被害者の声を拾うことは、同じシチュエーションでの事故の予防につながるからである。先日ユタ州アルタのグリズリー・ガウチで起きた雪崩事故(プロスキーヤーのエイミー・エンゲルブレットソンは埋没したものの無傷で生還)が良い例である。エイミーは自身に起きたことやグループが犯したミスを事故直後にブログで綴った。今回Sportgevityではブルース・トレンパー氏(『雪崩リスクマネジメント』の著者であり1986年からユタ州雪崩センターの所長を務める)にグリズリー・ガウチの事故や侮辱による負の連鎖を変える方法について考えを語ってもらった。 Sportgevity(以下S):先日のグリズリー・ガウチの雪崩事故では何か見えない力のようなものが働いていたとお考えですか? ブルース・トレンパー(以下B):グリズリー・ガウチは魅力的ですが厄介な場所です。今回の事故は法律用語の「誘引的ニューサンス」(訳者注:ニューサンスとは間接的な他人の財産享有妨害や生活妨害を表す英米法の概念)の典型的な事例といえます。とても狭いガリーがあり、小さな雪崩でも深い埋没が避けられない地形の罠がひそんでいますが、人気のあるスポットです。駐車場から簡単にアクセスでき、ガリーの上部には小屋もあるからです。見た目からはあまり危険に感じられないのですね。実際今までも危ない目にあったという報告はありました。死人が出ていないのが不思議なくらいです。 アルタのスキー場からバックカントリーに出るマジックラインを一歩踏み越えた途端、そこは石器時代から変わらない場所です。ライオンやトラ、クマ、雪崩が獲物をじっと待ち構える場所なのですが、極めて安全に管理されているスキー場から抜け出てきた人にとって、簡単に頭を切り替えることは難しいといえます。ディズニーランドから一歩外に出ればそこは強盗もいる現実社会ですが、夢の世界の余韻はすぐには消えないものですよね。 S:グリズリー・ガウチ雪崩事故の被害者エイミー・エンゲルブレットソンは「Bind Spot」(翻訳版)というタイトルのコラムをブログに載せました。当日のリスク評価の際に見落としたいくつかの重要な点が語られています。雪崩のリスク評価に関して、今日のスキーヤーやスノーボーダーにとってブラインド・スポットとなる最も強力なものは何だとお考えですか? B:ヒューマンファクターにはたくさんの種類がありますが、どれか一つでも人は簡単にバイアスがかかった状態になります。ヒューマンファクターが厄介なのは、誰でもその影響下にあるということです。雪崩のプロフェッショナルも同じです。私も毎日この強敵と戦っています。 グリズリー・ガウチの雪崩事故にみられるヒューマンファクターには、パウダーと青空がもたらす幸福感、親密感、仲間内のプレッシャー、コミュニケーション不全、確証バイアス、楽観バイアス、集団的な対抗意識などがありました。ヒューマンファクターが強力なのは広告業界を見れば分かるでしょう。広告に影響されまいと思っていても、完全に自由な判断をすることは無理からぬものがあります。 ヒューマンファクターと戦うための方法を私の著書『Avalanche Essentials』から引用しますと、チェックリスト、「ユリシーズの契約」(当日絶対に立ち入らない斜面を事前に協議する)、「事前検屍」(明日の新聞の見出しを想像する)、反対意見(常に反対意見を出すことでグループは起こりえるミスの原因を検討することができる)の4つがあります。これらを上手く活用することです。 S:昨今アクションスポーツ界のアスリートはエンターテイナーの役割をいっそう担うようにな… Read more

3 26, 2014

ファーストチェアをゲットするゼ!の巻

Room #4 Chain's Rule スマートに絶対ファーストゲットできる戦術めっけ! by チェーン・マッキー ニンバスの『ITALIA』観た?ネクストレベルなスタイル憧れるわー。ベンちゃんのノーズバターはムリでもコルチナならイケる。もちNIPPONのコルチナよ。 よっしゃ明日は稗田2ファーストトラック杯に参戦。さっそく今夜のうちに競争率下げておこ。 「トイレまで膝ラッセルでソレル死亡@白馬道の駅。大雪で明朝コルチナ第4は運休確実!」 ツィート完了っ!情強バカども拡散よろしくー 問題は山麓クワッドのファーストチェア争い。8時半のオープン直前には100人を超える粉の亡者が世界中から駆けつける。「JAPANESE NOT ONLY」な「白馬コルチナ国際スキー場」の名称に偽りなし!あれっ「白馬」と「コルチナ」はハッタリやん。シベリア産と日本海産の天然雪をフルコース提供してんのになんちゅうチンケな偽装表示。 悪りぃ話がそれた。えーと前々回7時半に板並べたときは20番手、前回は6時半で5番手のポジションだったから今回は5時半?狂ってるわー。 誰かファーストチェア代行業やったら儲かるんじゃね。「早起きは三千円の得」って言うし。 ”純度100%小谷産オーガニック粉雪ありマス。料金:時価” ゲレンデ六法にダフ屋行為禁止事項なかったよな。 ちょ待て、5時半より前に来る奴がいたらどーするよ。TLの過熱っぷりからいってリスクは"Considerable"。保守的な意思決定よりも革新的ファーストトラック戦術の必要性あり、か。塩ビの脳ミソしぼってネタ出しすっか。 オペレーション・ブラッディ・サタデー Inspired by "There's Something About McConkey". <PG-12指定> 先頭集団を切株惨殺!ボラント印のステンレス製手鉈の切れ味スィート!DPSスプーン野郎が束になってかかって来ても負ける気しね。「Ah, first chair. "SWEET".」の捨て台詞いっぺん言ってみたかったんよー。 どーせマスゴミはゲーム脳でイカれたコピペ殺人のレッテルを貼るんしょ。ムカツクけどオンリーワンのやり方でナンバーワンのチェアゲットしないとレジェンドにはなれんよね。 オペレーション・ケロッグ 一日の始まりはケロッグのゲロ飯からのアップヒル。トレンドウォッチャーのオイラ情報ではお米の国のネクストレベル・リゾートスキーヤーの間で大ブームとな。ラストフロンティアは営業前のスキー場にあり。7時スタートのハイクで稗田2ファースト確実! 行列からの冷たい視線には中指立てりゃイイけど実際ビンボー臭ぇ。プロフェッショナルダミーのプライドを傷つけるマネはできん。 おっとここで破壊と創造の神スパチュラ降臨!スマートに絶対ファーストゲットできる方法めっけ。オイラってブレストの鬼やね。 翌朝8時リフト乗り場 おっ常連のTwitterフォロワーさんたち来てるな。早起きご苦労なこった。「おっはー」 「あっチェーンさん!おはようございます」「今来たの?二度寝?」「負け犬め」 「早朝から椅子取りゲームなんかやってられんて。そんな痛々しい努力せんでも今日はぶっちぎりでポールポジションよー」 「えっ!」「寝言?」「賄賂かよ」 「セブンコーヒーで覚醒済みよ。ちょっとゴメン、ファーストゲッターのお通りでぃ!」 一列目に並ぶマシェット。いぶし銀に輝く愛棒。念願の嬉し恥ずかしのファーストチェア。見よ、誇らしげにビンビンに反り立つあのロッカーの勇姿を!ん、ビンビンロッカー?ボラント・マシェット69は保守勢の最後の砦たるトラッドなチップ。なんでリベラル野郎のロッカー仕様に??? 「トップシートにキャタピラ痕ありますよ」「圧雪車に踏まれたね。でも何でだろ?」「ザマア」 「昨日のナイター営業終了後にダッシュで板並べたんよ。深夜の降雪で板が隠れて・・・」 「まるで新入社員の花見の席取りですね」「モラル軽視のバチが当たったのかな」「ジーニアス!」 よく見ればソールも変形してらー。流行りのコンベックスに。罰か。いや福音じゃね。マシェットver2.Oに進化して新雪戦闘力5ptアップは間違いなし。マッコンキーターンもイージーライダー。いっそのこと福音派DPS教に入信すっか・・・ リフト運行開始5分前 「チェーンさん、そろそろ準備しましょう〜」「青空出てきた。ザ・デイ予感キタ!」「邪魔、どけ」 「やる気スイッチ入れるわー」 あれっヒールピースの動きおかしくね?解放バネがバカになってる!\(^o^)/オワタ 「チェーンさんお先で〜す」「面ツルいただきまーす」「リリカルでスィーツ食ってろ」 「くそ〜プロフェ… Read more

3 26, 2014

リアル・ディール

Room #4 Interview 生還者が語るイーストヴェイル雪崩事故の顛末 text by エドウィン・ラメイヤーは私たちと同類だ。3つの頃に初めてスキーを履いて以来ずっと19年間スキーにのめり込み、コロラド・ロッキーで最高の一本を滑ることにエネルギーを注いできた。デンバー東の郊外エンゲルウッドに住むスキーヤーと同じく、冬になればロッキー山脈へ弟のデービスと一緒に足繁く通う。現在コロラド大学ボルダー校の4年生で、卒業後はロースクールの入学資金を貯めるためにヴェイルで1年間働きながら滑る計画を立てている。 2013年12月22日、エドウィンはイーストヴェイル・シュートで雪崩に巻き込まれた。弟デイビスと友人ジャック・エドガーの3人でこの日2本目となるアブラハム・フェイスの中間部を滑っていたときのことだった。エドウィンは為す術もなく疎林の中を流され、崖から落ちて最後は雪に埋まった。幸いにも顔と片手を除いて。走路の左側を流されたので、なだらかな棚状の場所で止ることができた。流れの強い中央付近だったら、急斜面をもっと下まで転がり落ちたかもしれない。 弟のヘルメットに装着されたGoProの映像はインターネットで瞬く間に広がり、ABCやNBCの全米ニュース番組でも使われた。すでにご覧になった方もいるだろう。 雪崩に流されている間エドウィンは生存本能と知識をフル回転させ、運良くデブリの表面に顔が出た。両膝を負傷(右膝の前十字靱帯と内側側副靱帯の断裂及び左膝の捻挫)したものの、自力で無事に下山することができた。 今回Sportgevityはエドウィンにインタビューする機会をえた。自身の身に起きたことを率直に語ってもらい、詳細な体験談を聞くことができた。まずはエドウィンの誠実さに感謝したい。 「雪崩に流されることは、思っていたものとは少し違う体験となりました。とても流動的で、大きな川の中を下っているようでした。巨大な力が絶えず押し寄せて身動きがとれませんでしたが、感覚的には液体の中にいる感じです。暴力的だけど優美なひと時でした」エドウィン・ラメイヤー 事故前日まで Sportgevity(以下S):ツアーの計画や準備の段階では、どんな気持ちの状態でしたか? エドウィン(以下E):木曜日に大学の卒業試験を終えるとスキー道具をとりにデンバーの実家に夕方に戻り、そのまま泊まりました。金曜の朝、仲間二人と合流した後ヴェイルへ車を走らせ、イーストヴェイル・ラケットクラブの家族所有のコンドミニアムへ行きました。ホットタブやプールからラケット・シュートやキング・アーサーズが一望できるんです。その夜湯船に浸かりながらいくつかシュートをじっくり眺めると、滑るには積雪量は不十分に見えました。翌日から始まるスキーシーズンにワクワクしていましたね。 土曜は朝早く起きて、ヴェイルのリフトに飛び乗りました。雪質は申し分なかったのですが、昼には混み始めました。そこで弟と数人の友達と一緒にリフトを使ってエリア外を数本回しました。雪はびっくりするほど深くて柔らかかったです。心身ともにウォームアップ終了って感じで、バックカントリーの難しい地形をはやく滑りに行きたくなりましたね。   日曜は朝方にエリア内で数本滑ってからイーストヴェイルを2本回す計画でした。オリエントエクスプレスに乗ってハイクアップを始めたのが10時頃です。山頂に着くとボーダー数人が休憩しており、先にドロップインを譲ってくれました。ビーコンチェックや滑走ラインを確認し、ぬかりなく段取りを進めました。ファーストランは万事うまくいき、雪も最高でした。人生ベスト級の一本でしたね。バスでヴェイルに戻りロッジでひと休憩した後で、次の滑走準備に取りかかりました。 S:コロラド雪崩情報センター(CAIC)の雪崩情報サイトはチェックしましたか? E:はい、当日の朝と前夜に。どちらも雪崩の危険評価はモデレートでした。 S: CAICの雪崩情報は自身あるいはグループのリスク意識にどんな影響がありましたか? E:新しい降雪があったことやウィンドスラブが発達しやすい気象のことは、みんな当然知っていました。雪崩情報の評価はイーストヴェイル行きを中止する理由としては不十分でしたが、地形選択する上で参考にしました。できるだけ安全なスロープを選び、ライン取りも慎重に考えようと。 S:「人為的発生」雪崩が起こりうるという雪崩評価をどう受け止めましたか? E:雪崩評価は的確だったと思います。イーストヴェイルを滑る者なら誰でも、あの評価は現実的なものと考えるでしょう。これまでも雪崩が起きてますし、あちこちにアバランチパスがあります。実際に行ってみれば、自分がトリガーになるかもしれないというリスクをすごく感じると思いますよ。危険とは無縁と感じるような場所ではないことは確かですね。 S:当日の朝あるいは滑走前、グループのメンバー間で雪崩リスクに関してどんな話し合いをしましたか? E:CAICの雪崩情報は頭に入っていたので、出来る限り安全な地形を滑る予定でした。1本目の滑走終了… Read more

3 26, 2014

グリズリー・ガウチ・アバランチ!

Room #4 Interview 雪崩事故が起きた理由を私がブログで語る理由 text by 2013年12月9日、エイミー・エンゲルブレットソン(プロスキーヤー)は快晴の青空の下、写真家のアダム・クラークらとユタ州アルタで撮影にのぞんでいた。パーフェクトなパウダーと快晴の青空、笑顔のクルー。全てのパーツが揃っていた。その日の午後、一切が反転するまでは。 スキー場の中で撮影を行っていた三人は、人気のバックカントリースポット通称グリズリー・ガウチへと足を伸ばすことを決めた。クラークはそこで何度も撮影したことがあり、アルタの駐車場からツボ足でも短時間でたどり着ける場所である。 エンゲルブレットソンはドロップインすると、勢い良くスラッシュターンをきめた。その直後、足元の雪面がひび割れ雪崩が起きた(ユタ州雪崩センターの発表によると幅46m、破断面60cm)。エアバッグを展開した彼女は近くの立木に抱きつこうとしたが、雪崩に捕まり30m流された。地形の罠にはまり約50cmの深さで完全埋没。埋没後5分足らずで掘り起こされ無傷で生還したが、永遠に消えることのない傷が心に刻まれることになった。 今回Sportgevityはエンゲルブレットソンにインタビューを申し込み、当日グループに働いた見えない力、あるいは事故のことを公の場で話すことの意義について話を聞くことができた。 「物語として伝えれば、それもみんなが興味をもってくれる物語ならヒューマンファクターの重要性が理解できるでしょ。つまんないなら自分の身にも起きることだと思いながら読んでくれないわ」エイミー・エンゲルブレットソン Sportgevity(以下S):当日の出来事について、とても思慮深いまとめをブログ(翻訳版)に投稿されました。なぜ記事にすることに決めたのですか? エイミー・エンゲルブレットソン(以下A):自分の身にこんな事故が起きるなんて、これまで思ってみなかったの。あんな結果になってしまって、本当に自分自身にガッカリしたわ。だから私たちがやってしまったお粗末な判断ミスを言葉にしてアウトプットすれば、同じように自信過剰になっている他の人の役に立つかもしれないと考えたの。それに、紙の上に言葉を書き出すとなんか心が落ち着くのよ。 S:雪崩事故が起きるとウェブでもどこでも、したり顔でものを言う人がよく出てきます。事故原因について批評したり憶測で言ったり。そういった類のものを見たりしましたか? A:たしかにブログに記事をアップする前にネガティブなコメントをいろいろ見たり聞いたりしたわね。それよりも事故後のみんなとの会話をよく覚えているの。”Considerble”の雪崩情報を知っていながらもセーフティギアを装備していないメンバーがいるグループが雪崩にあったことをオンラインで知ったらどう思うか?って。私ならたぶんこう言うわ。「バッカじゃない」。私たちのグループは大きなミスをいくつもしたし、運にも恵まれた。他の人が何を言うかはともかく、自分の身に起きたことを伝えなきゃと思ったの。 S:あなたのような雪崩事故の被害者が公の場で話したり書くことの利点は何ですか? A:謙虚に事故と向き合えることね。自分の経験を多くの人に伝えることは、愚かな自分をさらけ出すことだと思うの。最初はすごく乗り気じゃなかったわ。普段の私は安全第一で注意深い人間なの。そんな私でもヘマをする。だからこの経験をみんなにシェアしなきゃって思ったの。それに雪崩事故のレポートって事実の列挙ばかりで味気ないじゃない。私が書くならどうしてあんな状況になってしまったのか、バックストーリーみたいなものを入れたいと思ったの。物語として伝えれば、それもみんなが興味をもってくれる物語ならヒューマンファクターの重要性が理解できるでしょ。つまんないなら自分の身にも起きることだと思いながら読んでくれないわ。 S:確かにヒューマンファクターは重要な役割を果たしました。当日の意思決定に影響を及ぼしたいくつかの要因について話してくれますか? A:まず自信過剰ね。私以外の者は雪崩が起きたスロープに親近感を持っていたわ。それにリフトがすぐ近くにあるという安心感やローカルの意見を鵜呑みした要因もあるわね。夢にまでみたパーフェクトな一日に浮かれて冷静じゃなかったわ。トントン拍子で良い写真が撮れたせいもあって、深く考えることなく他の二人にはお馴染みの場所に向かったの。おしゃべりして盛り上がりながらスキー場の境界を越えたとき、ガードは下がりきっていたわね。 S:ドロップインのとき何を考えていましたか?雪崩が起きる可能性は何パーセントくらいあると思いましたか? A:正直に言ってゼロよ。滑ることに夢中で、それに仲間を信頼しきっていたせいね。ドロップインの時点では雪崩のことは全く頭になかったわ。 S:私たちは雪崩が発生する場所を論理的に特定できますが、目に見えない力によって認識力は鈍ります。あのスロープでハイスピードの鋭い右ターンをきめたとき、「もし雪崩が起きたら」という考えが頭によぎりましたか? それとも特に問題を感じませんでしたか? A:スピードをつけてス… Read more

3 26, 2014

Room #4 Intro 雪崩事故を語るということ by 稲葉 直幸 「愚かしさは、ぼくたちが過去をふりかえったときにもっとも目につきやすいふたつのことの片割れでもある。もうひとつは、逃したチャンスだ」スティーブン・キング『11/22/63』 今号の特集記事には雪崩から生還したスキーヤーのロングインタビューを2本掲載しました。「グリズリー・ガウチ・アバランチ!」は写真撮影の最中に起きた米国アルタの事故、「リアル・ディール」は弟が兄を救助した米国イーストヴェイルの事故です。どちらも昨年12月滑走者自らがトリガーとなり埋没しました。 両者ともインシデント自体は典型的といえますが大きな話題となりました。グリズリー・ガウチではエアバッグユーザーが完全埋没したことでエアバッグの有効性に一石を投じたからです(WHITE ROOM #3「なぜ彼女は完全埋没したのか?」でも取り上げました)。イーストヴェイルの事故では雪崩発生直後から救助までをリアルタイムに記録したPOVがYouTubeで公開され、事故現場の生々しい臨場感が日常に侵食しました。 話題性とは別に2つの事故にはいくつかの共通点があります。スキー場近くのバックカントリーで起きたこと。経験豊富なローカルのメンバーがいたこと。事故直前まで最上の時間を過ごしていたこと。そして、自分の身に起きたことをウェブで共有したことです(「Blind Spot」「East Vail Slide 12/22/13」)。 雪崩事故の体験を語ることや綴ることは、ある面では自分の犯した愚かな失敗を告白することです。公の場であれば少なからぬ恥ずかしさを覚えます。ウェブのような匿名性の高い空間では、見知らぬ他人からの手厳しい意見や誹謗中傷が待っています。 「もし他人がこの雪崩事故を起こしたなら、レポートを読んだ私はこう思うにきまってる。『バッカじゃない』」エイミー・エンゲルブレットソン「Blind Spot」 メディアのインタビューに応じることは、ともすると恥の上塗りになりかねません。彼らは勇気があるから自分の意見を言えたのでしょうか。あるいはどのようなインセンティブが働いたのでしょうか。答えはインタビューの中にあります。 ですが、本当に重要なのは個人に還元される性質や動機ではありません。今号「侮辱の連鎖」の中でブルース・トレンパー(ユタ州雪崩センター所長)が指摘するように、当事者が率直に語れる環境を整えることにあります。 彼らのリアルな声を聞き過去の事故から学ぶことが必要とされるのは、私たちも当事者になるかもしれないからです。千載一遇のチャンスとばかり目の前のパウダーに心が奪われ、両手で顔を覆いたくなるほど恥ずかしいミスをして。 稲葉 直幸/medium@Naoyuki_Inaba 今シーズンの恥ずかしい思い出。フラット林道をかっ飛ばしてたら雪で隠れたヤブにスキーを引っかけて左膝を捻挫。年末年始の新雪デイをちんたら滑る羽目になる。 ILLUSTRATION BY Nemo WHITE ROOMのテキストは クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。   Room #4 コンテンツ一覧… Read more