12 30, 2013

雪崩はサイコロを振らない

生存オッズ Room #3 Editorial Note 生存オッズ by 稲葉直幸 今号のテーマに雪崩エアバッグを選んだのは、カタログに載っている情報以上の実態に迫りたかったからです。こうして編集後記を書いている今、あやふやな輪郭をどれだけ実体化できたかは分かりません。無責任な言い方をすれば、個々の記事から得た断片を組み上げる作業は読者の皆さんの手に委ねられているのだと思います。ここでは最後のピースをお渡ししたいと思います。 雪崩エアバッグメーカーのBCAが2012年に行った オンラインアンケート調査で、エアバッグ購入の動機として最も高かったのは「生存率を上げるため」という回答でした。エアバッグの購入や使用の動機として至極正論です。しかし真実からは遠いところにあります。確率はどこまでも確率にすぎず、現実にはならないからです。 生存率97%は100人中97人の生存を意味します。最初の雪崩で98人目にならない保証などこの不条理な世界にはありません。誰の人生も一度限りです。人生を100回繰り返して答えを出すことはできないのです。97%と50%では確率としては意味のある違いですが、現実に生き残るうえでは何ひとつ語っていません。 エアバッグで雪崩の生存率を上げる。別の言い方をすれば、雪崩に巻き込まれた際の生死のオッズを生存の方にいくらか重みをつけることです。エアバッグを背負えば、有利なオッズで賭けに臨めると多くの人は考えます。イカサマの後ろめたさを感じることなく。しかし決してスキーヤーに有利に働くことはありません。雪崩はサイコロを振らないからです。 稲葉直幸 エアバッグの重さが気になる年齢になったものの、エアバッグ依存症から抜け出せないこの頃。 スキーヤー的に今年度のベスト映画は「ゼロ・グラビティ」。刹那の無重力を体感する術をもつスキーヤーなら必見!酸欠状態でエアロックに飛び込み、息苦しさから解放される主人公。 雪山でも絶対に味わいたくない瞬間をエア残量100%の状態で体験し、エアバッグ依存症を克服する決意をする。 WHITE ROOMのテキストは クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。  … Read more

12 30, 2013

エアバッグ劇場

Room #3 Video Room POVマスターから007まで特選エアバッグ動画8本立て by 稲葉直幸 Contour POV 2013 from KC Deane テストラン数本後に発生した雪崩から運良く生還。BCAフロート着用。 スラブが割れた瞬間、地形の罠の中にいることの恐怖が体感できるPOV。 Avalanche Escape - Julien Lopez スラブアバランチの猛追から必死で逃れるジュリアン・ロペス。 Freeride World Tourアスリートの滑走技術と体力でも、、、長い5分間が待ち受けていた。 Avalanche airbags field test スロヴァキアの山岳救助隊によるダミーを使った本気のフィールド実験。発破で誘発した雪崩がABS、スノーパルス、BCAフロートを装着した3体に迫る。 埋没を免れたとしても、本流の直撃をくらえば、、、、 Freeskier survived avalanche accident with ABS Airbag 選曲にあざとさを感じるプロモーション動画。 エアバッグの有効性を宣伝できても、肝心なことは全く伝えていない。 Avalanche Accident in Engelberg ”「雪崩なんて他人事だと思っていた。2011年3月20日までは」” 肝心なことをちゃんと伝える稀有な雪崩生還POV。 The Avalanche at Tunnel Creek: Disaster on the Mountain 2012年2月の米国スティーブンスパス・スキー場裏で起きたトンネル・クリーク雪崩事故のショートドキュメンタリー。 雪崩に巻き込まれた4人のうち唯一エアバッグを装着していた1人が生還。全米マスメディアが騒いだ結果、一週間でショップの棚からエアバッグが消えたという。米国で雪崩エアバッグ普及のティッピングポイントとなった事故でもある。 参考記事:Tunnel Vision 事故当事者のライターによるドキュメンタリー全訳。自己の内面とグループ心理の描写が秀逸。 The Invisible Bicycle Helmet | Fredrik Gertten 自転車用のエアバッグ開発のショートフィルム。 "「挑戦もしてないくせに、不可能なんて誰にでも言えるわ」デザイン学校の学生アンナとテレセが卒業試験に選んだのは誰も挑戦したことのない前代未聞のプロジェクトだった。思い描くものができれば、きっと革命を起こす。自転車は世界を変える力を持っている。自転車が安全なものになれば、みんなの人生はもっと良いものになる。" The Greatest Bond Gadget of All-Time スキーアクションはもちろん雪山ガジェットも常に新しいものを取り入れるオレたちの007シリーズ。 1985年公開の『美しき獲物たち』ではいち早くピープス製?ビーコンが登場し、『ワールド・イズ・ノット・イナフ』('99年)ではエアバッグを凌ぐエスケープボッド内蔵のスキースーツが大活躍。埋没を前提としているところが画期的。 デブリの中からパンチ数発で脱出できたのは、きっと兵器開発課長Qの秘密道具があったに違いない。 稲葉直幸 エアバッグの重さが気になる年齢になったものの、エアバッグ依存症から抜け出せないこの頃。 スキーヤー的に今年度のベスト映画は「ゼロ・グラビティ」。刹那の無重力を体感する術をもつスキーヤーなら必見!酸欠状態でエアロック… Read more

12 30, 2013

電動ファン式エアバッグJetForce

Room #3 Gear エアバッグ市場に旋風を巻き起こす革新的エアバッグの機能 by 稲葉直幸 不意打ちジェットストリームアタック この秋、かねてから噂されていた電動ファン製の雪崩エアバッグの正体が突如明らかになりました。ポピュラーサイエンス誌によって、ブラックダイヤモンドから2014年秋に発売される予定のJetForceは充電式バッテリーを使った電動ファンでバルーンを展開する全く新しいタイプのエアバッグと報じられたのです。 その後、いち早くJetForceの独占レビューを載せた老舗ブログWildsnowのサーバーが一時ダウンするなど大きな注目を集めました。これまでのエアバッグの運用上の大きな欠点、すなわち圧縮ガスの再充填と航空輸送の問題を克服する革新的な機能をもつからです。 国内での販売時期は不明ですが、圧縮ガスカートリッジを使用する従来製品の障壁である高圧ガス保安法の規制をクリアする必要がないため、来季からの販売も期待されます。 12月の時点でメーカーの公式アナウンスはありませんが、10月にコロラド・スノー・アバランチ・ワークショップで開発者によって発表された情報を以下にまとめました。 機能面 複数回展開 満充電の状態で雪上なら4回膨張が可能(室温なら6回)。ツアー時にちゅうちょなくトリガーを引くことができます。-30°Cの極寒コンディションでも最低1回は膨張可能。 トリガーにはバルーン展開の起動とは別にシステムのオン・オフのスイッチがあり、誤作動の防止に役立ちます。仮に誤作動を起こしても複数回展開できることは画期的です。 起動は従来型と同じくトリガーを引いて行います。トリガーハンドルにはLEDインジケータがあり、起動可能な残回数が表示されます。 電動ファン出力 60,000RPMで回転する小型ファンはコンピュータ制御され、トリガーを引いた後以下の通り作動します。 0-9秒:強制出力 
100%の出力でファンが回転。3.5秒で200Lのバルーンが完全膨張。 10-60秒:アクティブ・パフォーマンス
 雪崩に流されている時間帯を考慮し、50-100%の間で出力して完全膨張を維持。 1-3分後:膨張維持
 20秒間隔で3秒間フルスピードで出力。雪面上に出た場合、膨張を維持をすることで救助者による発見を容易にします。 3分後:エアの自動排出
 自動的にファンが逆回転し、バルーン内の空気を放出。部分埋没あるいは完全埋没した場合、萎んだバルーンの周りにエアポケットが作られる可能性があります。埋没を免れた場合でも素早い再パッキングに役立ちます。 空気漏れ対策 ひっかきに強いシリコンコーティングされたナイロン製バルーンを採用。破れた場合、エアを送り続けることで膨張を保ちます(最大約20cmの傷まで膨張可能)。従来の製品よりもツリーランに有利とまでは一概にいえませんが、革新的な機能であることは間違いありません。 運用面 充電式システム ラップトップで使われるタイプのリチウムポリマー電池を使用。圧縮ガスを充填するカートリッジが不要になり、再充填のコストがかかりません。充填サービスショップに行く手間も省けます。また航空輸送の際の煩雑さからも解放されます(ただしワット時定格量160Whを超える電池だと危険物扱いになる可能性があります)。 ゼロコストのテスト展開 テスト展開を気軽に行えることで、展開練習を反復できます。(トリガー練習の重要性は別記事「明日に向かって撃て!」をご参照ください) エラーの自己診断 電子機器の故障を診断するプログラムにより不意の展開失敗に備えます。 想定されるリスク 電子機器を多用することから、吹雪や極低温下での氷結や雪崩による衝撃、あるいは滑走時の断続的な振動などによる故障が想定されます。厳しい環境で展開テストを繰り返して開発しているとはいえ、新しいテクノロジーには大きなリスクがつきものです。 Black Diamond Halo 28 JetForce 重量:約3,36kg 
予定価格:$960 稲葉直幸 エアバッグの重さが気になる年齢になったものの、エアバッグ依存症から抜け出せないこの頃。 スキーヤー的に今年度のベスト映画は「ゼロ・グラビティ」。刹那の無重力を体感する術をもつスキーヤーなら必見!酸欠状態でエアロックに飛び込み、息苦しさから解放される主人公。 雪山でも絶対に味わいたくない瞬間をエア残量100%の状態で体験し、エアバッグ依存症を克服する決意をする。 WHITE ROOMのテキストは クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。  … Read more

12 30, 2013

雪崩事故がなくならない理由

Room #3 Book リスク・ホメオスタシスと雪崩エアバッグ by 稲葉直幸 「事故がなくならない理由:安全対策の落とし穴」芳賀繁著 安全対策によって変化する人の行動 ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)や急ハンドルでも車体を安定させるESC、障害物を感知して自動的にブレーキをかける衝突防止装置。車の新しい安全装置が開発されても交通事故はなくなりません。本書はその理由を工学的なアプローチではなく、人の心理から探ります。つまり安全装置や安全対策の成果の鍵をにぎるのは、安全対策によって変化する人の行動だというのです。これは交通事故に限ったことではありません。 本書でも著者のリスクをめぐる興味の範囲は、食の安全から放射線まで多岐にわたっています。偶然なのか必然なのか、「雪崩に関する正しい知識とマネジメント技術について啓蒙するためのNPO法人」に所属するある雑誌記者から著者が聞いた話として、「ビーコンが普及するとともに、従来は危険でだれも近づかなかったような場所に登山家が入り、雪崩にあうケースが増えてきた」というストライクなエピソードも入っています。ビーコンなり車のABS装置なりを雪崩エアバッグに置き換えて読むと、本書のテーマ「安全対策によって変化する人の行動」はエアバッグユーザーにも身近な問題として迫ってきます。 リスク補償行動 本書の主張にしたがえば、雪崩エアバッグがセーフティーギアの標準装備になってもユーザーの雪崩事故はなくなりません。リスク補償と呼ばれる心理的な現象がエアバッグユーザーに働くからです。 リスク補償とは、安全装置を手に入れると人はリスクが減ったと感じて、自分の行動をリスクをとる方向へ変える現象です。雪崩エアバッグユーザーの場合、エアバッグによって低下した埋没リスクを埋め合わせるように、滑走や地形選択において高いリスクをとることがあります。実際、エアバッグメーカーのBCAが2012年に実施したオンラインアンケートの調査結果では、19%の回答者が高いリスクを許容したり、地形選択の意思決定に影響を与えると答えています。リスク補償行動が起きると、エアバッグを手に入れる前の元のリスク水準に戻ってしまいます。 なおエアバッグのような装置や環境に内在するリスクのことをイントリンシック・リスク[*1](イントリンシックは本質的なものを意味する)と呼びますが、技量の向上によってもリスク補償は起こります。例えば雪崩講習で雪崩のリスクマネジメント能力が高まれば、雪崩リスクが下がったと認識します[*2]。あるいは滑走技術が上がれば、転倒リスクが下がったと感じるでしょう。しかし自ら進んで雪崩地形や急斜面に飛び込めば、やはり元のリスク水準に戻ります。 リスク補償行動が起こる限り、雪崩や転倒、滑落のリスクを減らすはずの安全装置や講習会は、結果として雪崩事故や転倒事故のリスクを低下させられません。肝心のスキーヤー自身がリスクを増やす方向に行動を変化させるからです。 リスク・ホメオスタシス なぜリスク補償行動が起こると、人はリスキーな行動をとるようになるのでしょうか。その仕組みを説明する理論の一つが1982年にジェラルド・ワイルドが提唱したリスク・ホメオスタシス理論です。 「ホメオスタシス(恒常性)」とは生理学の用語で「外部環境が変化しても生体内部の環境が一定に保たれる機構」のことです。中学の理科で恒温動物の体温調節の仕組みとして習ったことを覚えている方もいるでしょう。ホメオスタシスの基本的メカニズムは、生じた変化を打ち消す向きの変化を生む働きである負のフィードバック機構[*3]にあります。エアコンの室温調整にも使われますが、ワイルドはリスクにも応用できると考え、リスク・ホメオスタシス理論[*4]としてまとめました。 エアバッグユーザーのリスクホメオスタシス リスク・ホメオスタシスのメカニズムの詳細は省きますが、ワイルドの主張で重要なのは次の2点にあります。 どのような活動であれ、人々がその活動から得られるであろうと期待する利益と引き換えに、自分の健康、安全、その他の価値を損ねるリスクの主観的推定値をある水準まで受容する。(本書57ページ) 雪崩エアバッグユーザーに置き換えてみると、新雪を滑ることはスキーヤーの利益(楽しみ)につながるので、エアバッグユーザーは雪崩の埋没リスクをある程度受け入れているといえます(スキー場の新雪エリアでもリスクはゼロにはならない)。その「ある程度」がリスク目標水準です。 人々は健康・安全対策の施行に反応して行動を変えるが、その対策によって人々が自発的に引き受け… Read more

12 30, 2013

エアバッグと快適な空の旅

Room #3 How-to エアバッグと飛行機に乗るための心得 by 稲葉直幸 <更新> IATA(国際航空運送協会)の項目に追記しました。(1/10) 結論:充填済みアルミ製カートリッジの輸送についてはルールが不明瞭です。アメリカ以外の国へ渡航する場合、輸送の可否は必ず航空会社へ事前に問い合わせてください。 雪崩エアバッグは危険物 飛行機を使った雪崩エアバッグの輸送には様々な注意点があります。まず、雪崩エアバッグは危険物だということです。爆発のおそれがあるもの、人に危害を与えたり物を損傷するおそれのあるものは、航空輸送では「危険物」として厳しく規制されています。雪崩エアバッグで使われる高圧ガスのカートリッジや火薬方式の起動装置(ABS製のみ)がこの「危険物」にあたります。ただし、一定の基準を満たす場合は「危険物」除外扱いとなり、航空機内への持ち込みや預かり手荷物による輸送が認められます。 危険物の輸送に関するガイドラインは国内の航空法の他に、IATA(国際航空運送協会)、TSA(米国運輸保安局)が定めるものがあり、「危険物」の規定は異なります。その結果、渡航先によって輸送の方法が変わってきます。例えばTSAの管轄となる米国への入出国の場合、充填カートリッジの輸送は禁止されており、中身を空にする必要があります。一方、IATAのガイドラインを採用するヨーロッパを含む多くの国では、充填カートリッジの輸送は承認されています。 以下、国内線と国際線(IATAとTSA)を利用する際のルールと注意点をまとめました。 国内線 結論から入りますと、どのメーカーのエアバッグでも機内への持ち込みや預け手荷物による輸送は、基本的に可能です。圧縮空気、圧縮窒素(ABS製のみ)どちらのカートリッジも充填状態でも許可されています。ABS製の火薬式起動装置も輸送可能です。個数はひとり1つに限られます。 航空法第27条に関連して国土交通省が作成した輸送ガイドライン「危険物であっても航空機内への持ち込み又はお預かりができるもの(PDF形式) 」によれば、以下の基準を満たす雪崩エアバッグは輸送が承認されています。 「区分番号が1.4であって隔離区分がSの火薬類で含有量が200mg以下のもの及び区分番号が2.2の圧縮ガスのものであり、誤作動が生じないように包装され、かつ、バックパック内のエアーバッグが圧力開放弁を有するもの[*1]」(上記リストの3ページ最下段「雪崩救難用バックパック」より) 現行のエアバッグはこれらの条件をクリアしています。なお以、前はカートリッジの容量規定(250ml以下)がありましたが、後述するIATAの輸送ガイドラインの改訂(2011年)にあわせて撤廃されました 参考データシート:BCA製フロート, ABS製カートリッジ及び起動トリガー, Snowpulse製カートリッジ ただし航空会社の判断によっては、基準を満たすカートリッジでも充填状態では許可しないケースも考えられます。利用する航空会社に問い合わせて、確認する必要があります。 国際線 国際線での輸送に関するルールは、IATA(国際航空運送協会)もしくはTSA(米国運輸保安局)によって決められています。渡航先の国や地域によって所定のルールと運搬方法に従う必要があります。 IATA 北米以外の大多数の国や地域が含まれます。ABS社の尽力により、2001年から雪崩エアバッグの航空機への持ち込みは認められています。危険物の規制に関する輸送ガイドラインIATA Table 2.3A(54th Edition)が定める条件(上記の国土交通省の基準と同じ)を満たせば、どのカートリッジでも基本的には充填状態でも輸送可能です(現行モデルならどのメーカーでも対応済み)[*1]。個数はひとり1つに限られます。 [1:リスト内の”Permitted on one's person”は、持込み手荷物の内の「身に付ける手荷物」を意味します。例えばスマートフォンのような品物です。エアバッグを機内に持ち込む場合、ラゲッジボックスに収納しなければなりません] IATAは航空会社や旅行会社などによる業界団体であり、規制のルールは法律ではなくガイドラインにすぎません。したがって航空会社によっては、充填カートリッジの輸送は認められない場合も十分考えられます。利用する航空会社に問い合わせて、確認する必要があります。 Tips エコノミークラス症候群予… Read more

12 30, 2013

雪崩の法則

Room #3 Movie 映画「悪の法則」に学ぶ雪山の不条理な鉄則 by 稲葉直幸 映画「悪の法則」オフィシャルサイト - 公式サイト 映画「悪の法則」予告編 明文化されたルールの中で生きる弁護士の主人公が一度限りの麻薬密輸ビジネスに手を出して、ルール無用の厄災に見舞われる_。 11月公開の映画「悪の法則」は、アメリカ現代文学の第一人者コーマック・マッカーシーが脚本を書き下ろしたことで話題となりましたが、興行的には振るいませんでした。主人公だけでなく観客もいったい何が起きているのかよく分からないまま事態が進行し、クレジットが流れても腑に落ちないことばかり。世界の不条理を冷徹に描くマッカーシーの世界観がよくあらわれているとはいえ、観客を置いてけぼりにする作品だからです。 釈然としないストーリー展開に加え、舞台はメキシコ国境近くの乾燥地帯。それでもスキーヤーである自分が惹かれるのは、世界の深淵を覗き見るような数々の台詞の魅力にあります。窮地に陥った主人公はわらにもすがる思いで助けを求めた人物にすげなくこう諭されます。目の前の世界はある時点で下した選択の結果であり受け入れるしかない、と。 それまで別の世界と思っていたことも現実化するまでは同じ世界とは思えないものです。ひとつのミスで大怪我を負ったことのあるスキーヤーなら身に覚えがあるでしょう。突然目の前の世界がグラグラして一気に現実感が遠のいていく瞬間を。 雪崩は自然界の法則です。雪山の領域に踏み入れた時点で、スキーヤーは気づかずとも新しい世界が立ち現れます。あるいは『悪の法則』流に解釈するならば、それ以前から始まっているのかもしれません。不謹慎なもの言いですが、11月の立山の雪崩事故は当日が土曜日でなかったら、状況はまた違っていたでしょう。23日に滑りに行くことを決めた時から自分のあずかり知らないところで物事が進行し、当日に新しい世界が出現したのです。人の手で雪崩サイクルをコントロールできない以上、「23日」に決定したことが一つの大きな選択だったという見方です。 運命や結果で事故を語っても何の解決にはならないという批判は当然あります。事故から学ぶことができず、技術や経験知の放棄につながるからです。しかし技術も経験も地位も権力も金も及ばない世界は常にそこにあるのです。そういう世界で生きていることをまずは認識、いや覚悟することも大切でしょう。 雪崩エアバッグにしても、買う買わないあるいは使う使わないの選択をしたときから物事は進行しています。それがどういう結末をもたらすのか、気づいた時には手遅れです。映画の中の人物は、それが欲望の正体だと言います。 主人公はダイヤモンドの欲にかられて悪事に加担しますが、欲深さが彼を断崖絶壁に追いやったのではありません。欲望そのものが断崖絶壁なのです。ちぐはぐな形のダイヤモンドに対して、「最初の切子面(ファセット)がカットされるともう後戻りできない」と原作の中のダイヤモンド商は人間の企ての不完全性を嘆きます。 新雪を滑る欲望にしても同じです。たとえエアバッグを背負っても斜面に最初のターンが刻まれると後戻りできません。それ以前からこしもざらめ(ファセット)はそこに存在しているのですから。 「悪の法則」コーマック・マッカーシー 稲葉直幸 エアバッグの重さが気になる年齢になったものの、エアバッグ依存症から抜け出せないこの頃。 スキーヤー的に今年度のベスト映画は「ゼロ・グラビティ」。刹那の無重力を体感する術をもつスキーヤーなら必見!酸欠状態でエアロックに飛び込み、息苦しさから解放される主人公。 雪山でも絶対に味わいたくない瞬間をエア残量100%の状態で体験し、エアバッグ依存症を克服する決意をする。 WHITE ROOMのテキストは クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。  … Read more

12 30, 2013

明日に向って撃て!

Room #3 Tips トリガーを素早く引くことの重要性 by 稲葉直幸 起動装置の信頼性 今季からドイツのエアバッグ専門メーカーABSの国内正規販売が始まります。ABS製のエアバッグはハンドル状の起動装置(アクティベーション)に少量の火薬を使用するため、購入にあたっては役所へ火薬類譲受申請が必要となります。このため実際に使用できるまでは少し時間と手間がかかります。 しかし85年にエアバッグの商品化に世界で初めて成功し、長い時間をかけて改良を重ねてきたメーカーですので、機能性は他メーカーよりも先進的です。その一つがこの起動装置です。バルーン展開までの起動(起爆)スピードの速さ、軽い牽引力(ケーブル方式と異なりプレテンションがない)がその特徴です。 信頼性に関して言えば、ABS以外のメーカーが採用するワイヤーケーブル方式には、凍結や切断による作動不良リスクがあります。一方、圧縮空気の力によってカートリッジ付近に設置されたピンを押し下げてガスを放出する機構のABSには、当然ケーブル切断のリスクはありません。もちろんABS製にも火薬方式固有のリスクがありますし、作動不良の可能性はゼロではありません。 どちらの方式にも固有のリスクはありますが、「信頼」というキーワードでエアバッグを選択する際、起動装置はバルーンの形状と並んで、重要な要素になります。火薬方式とケーブル方式それぞれの特徴を理解し、欠点を把握したうえで選択することが大切です。 起動装置の優劣よりも大事なこと 雪崩に巻き込まれた際、コンマ1秒でも早く起動させることが重要です。とはいえ、スラブアバランチのような足元がとても不安定な状態、あるいは雪の中を転がり落ちる中でトリガーを引くことは想像以上に簡単ではありません。ABSのワイヤレス起動ユニットも自力でトリガーを引くことの困難さから開発されました(8月にリコール対象品となったため現在国内では販売されていません)。 2011-12シーズンのスイスの雪崩事故だけでも、トリガーを引けずに展開失敗したエアバッグユーザーの事例は10件(全体の約13%)あります。スイスと日本とでは滑走環境が異なるため一概に言えませんが、起動の難しさは容易に想像できるかと思います。肩口までの1メートル足らずの距離が雪崩の奔流の中ではとてつもなく長いのです。 いざ雪崩にあったときに慌てないためにも、トリガーを引く練習を繰り返すことが大切です。テスト展開は、トリガーを引く力加減の感覚をつかむうえで良い練習になります。左利きの人は右肩にも配置できるモデルを選んだ方が良いでしょう。雪崩の衝撃や障害物との衝突で気を失うケースを考えれば、できるだけ雪面上でバルーンを展開することが望まれます。 スイスの雪崩事故におけるエアバッグの展開失敗率 2011-12シーズン(ABS製)エアバッグユーザーの雪崩事故件数 80件 ・(部分及び完全)展開失敗件数 18件 ・展開失敗の発生率 23% 展開失敗の内訳 ・ユーザーエラー:トリガー牽引できず 10件 ・ユーザーエラー:トリガーハンドル未装着 3件 ・技術的要素 2件  ・雪崩による破損 1件 ・不明 2件 展開成功者の生存率 96.8% (部分及び完全)展開失敗者の生存率 72.2% 非エアバッグユーザーの生存率 71.4%(同データセット) <スイス国立雪・雪崩研究所作成のデータセットより> 注意点 *未報告の軽微な事故を含めると、全体の展開失敗率は下がると予想されます。 *他メーカーを含むデータはないので、各製品の優劣の比較には使えません。 *地域や時期、サンプルは限定的です。解釈や取り扱いには注意が必要です。 稲葉直幸 エアバッグの重さが気になる年齢になったものの、エアバッグ依存症から抜け出せないこの頃。 スキーヤー的に今年度のベスト映画は「ゼロ・グラビティ」。刹那の無重力を体感する術をもつスキーヤーなら必見!酸欠状態でエアロックに飛び込み、息苦しさから解放される主人公。 雪山でも絶対に味わいたくない瞬間をエア残量100%の状態で体験し、エアバッグ依存症を克服する決意をする。 WHITE ROOMのテキストは クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。  … Read more

12 30, 2013

シリアルキラー・アバランチ

Room #3 Experiment なぜ雪崩エアバッグは浮くのか? チェーン・マッキーが体を張って殺人雪崩に挑む! by 稲葉直幸 & チェーン・マッキー ブラジルナッツ効果 一見すると、エアバッグは大きく膨らんだバルーンの浮力で雪面に浮かぶように思われます。ところが雪崩は水のような液体ではなく、異なる大きさの雪塊の混合物からなる粉流体(液体のようにふるまう固体粒子)です。したがって救命胴衣のように浮力によって浮くことはありません。ブラジルナッツ効果と呼ばれる流粉体の分離現象によってエアバッグは上昇すると考えられています。聞き慣れない言葉ですが、実は身近なところで観察できます。 ミックスナッツの缶を開けると、一番大きなナッツが一番上にあることがよくあります。運搬時に缶が上下に揺られると、大きなナッツの隙間に他の小さなナッツが入り込んで押し上げ、そのまま表面上に留まるためと考えられています。一番大きなナッツがブラジルナッツであることからブラジルナッツ効果と呼ばれています。 写真:「ブラジルナッツ効果」ウィキペディア 雪崩の中ではエアバッグがブラジルナッツ、撹拌される雪塊が小さなナッツ類にあたります。エアバッグを装着したスキーヤーは雪崩の中を転がりながら雪塊に押し上げられ、雪面上に出ることができるというわけです。大きなバルーンでスキーヤーの体積を相対的に大きくすることで、エアバッグは最大限のブラジルナッツ効果を狙っているのです。 チェーン・マッキーの実験 ブラジルナッツ効果を実験で証明するために、今回チェーン・マッキーが協力を申し出てくれました。購入したばかりのエアバッグをテストしたいとのことです。 「俺を踏み台にみんながネクストレベルに行ってくれるなら、最高のダミー人生さ!」 多くのプロフェッショナルが信頼をよせるABSの模造品APS(Anti Professional System)をリボ払いで買ったチェーン・マッキー。 「安い命には安物で十分じゃね」 サイズ2のシリアル・アバランチに巻き込まれたチェーン。愛用のヴォラント・マシェット69が外れたブーツがかろうじて表面に出ている。 「アバランチとは、かくもシュガー味のようなものか」 ガラス瓶を上下に5回振った状態。ブラジルナッツ効果が発揮して半身が表面に出た。 「ハニートラップよりもテレイントラップ恐ろし」 さらに3回振ると完全に表面に出た。 「やっぱ雪崩運強えーな」[*1] 萎んだエアバッグはエアの自動放出機構[*2]によるもの。埋没した場合、エアポケットとなる可能性がある。 「空気読めないヤツって言われるけど、空気ってのはなぁ吸うモノなんだよぉ!」 [*1:ブラジルナッツ効果はオカルトではありません。サイエンスです] [*2:来季発売予定のエアバッグJetForceの新機能(本号「電動ファン式エアバッグJetForce」参照)] 稲葉直幸 エアバッグの重さが気になる年齢になったものの、エアバッグ依存症から抜け出せないこの頃。 スキーヤー的に今年度のベスト映画は「ゼロ・グラビティ」。刹那の無重力を体感する術をもつスキーヤーなら必見!酸欠状態でエアロックに飛び込み、息苦しさから解放される主人公。 雪山でも絶対に味わいたくない瞬間をエア残量100%の状態で体験し、エアバッグ依存症を克服する決意をする。 WHITE ROOMのテキストは クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。  … Read more

12 30, 2013

なぜ彼女は完全埋没したのか?

Room #3 Incident 地形とFACETSの罠にはまったエアバッグユーザー by 稲葉直幸 12月9日、米国ユタ州ワサッチ山脈で起きた雪崩事故の瞬間の映像。 写真:ユタ雪崩センター スキーヤー(女性)がトリガーとなった幅約45mのソフトスラブアバランチ。エアバッグ(ABS製)を展開したものの、約60cmの深さで完全埋没。グループの仲間と通りがかりの2パーティーによって10分以内に掘り出され、外傷はなかったとのこと。片方のスキーと精神的ショックを除いて。 事故レポート:Accident: Grizzly Gulch ユタ州雪崩センター 写真:ユタ雪崩センター 「エアバッグ展開後のいろんな事例を伝え聞くが、埋没した事故の報告を実際に聞くのは今回が初めてだ」ユタ雪崩センターの雪崩予報官ブレット・コバーニック(Woman survives burial in backcountry avalanche near Alta) 状況によってはエアバッグはその機能を十分に発揮できない場合があります。 今回のケースでは地形の罠が大きく影響したと思われます。ブレットさん曰く、「雪が狭い場所に一気に流れ込んだ。その結果、雪崩の規模が大きくなり、過大な負荷がエアバッグにかかることになった」 写真:ユタ雪崩センター ブラジルナッツ効果 エアバッグが十分機能しなかった他の要因に、標高差約30mという走路の短さも考えられます。雪崩エアバッグはブラジルナッツ効果と呼ばれる流粉体の分離現象によって上昇すると考えられています(別記事「シリアルキラー・アバランチ」参照)。しかし流される距離が短いとブラジルナッツ効果が十分に発揮できません。 今回のケースでは、体が雪面まで上昇する前に雪崩が止まってしまったと推測されます。走路が短くなった理由はソフトスラブに加え、急斜面から緩斜面へのトランジション地形も考えられます。 結果的に完全埋没しましたが、エアバッグのおかげでより深い埋没は避けられたとも考えられます。ただし近くに他のグループがいなかったら10分以内で掘り出すことは不可能でした。なぜなら今回の事故は地形の罠あるいは弱層となったFacets(こしもざらめ)だけが大きな要因ではないからです。 FACETSの罠 雪崩から生還したエイミー・エンゲルブレットソンさんが自身のブログにアップした事故レポート「Blind Spot」には、当日の行動や心の内が率直に綴られています。彼女自身が言及するように事故が起きたいくつかの要因には典型的なヒューマンエラーがありました。 当日、彼女は別グループでアルタスキー場で撮影しており、バックカントリーに入る予定はありませんでした。快晴の下のドライパウダーに気持ちが高ぶっていたところに、憧れのフォトグラファーから撮影の連絡が入ります。昼食をとることなく慌ててツアー装備をとりに駐車場へと戻ります。初対面のパートナーのスキーヤーは雪崩エアバッグを持ってきたつもりが、実際にはビーコンもシャベルも入っていないただのバックパックでした。エイミーさん以外の2人は目的のスポットで何度も撮影した経験があり、そのまま続行されます。彼女もフォトグラファーも当日の雪崩情報に目を通しており、「8,000フィート以上の北向きの斜面ではスキーヤーがトリガーとなる危険性がある」と注記された「Considerable」の評価を知っていたにもかかわらず、地形の罠が待ち受ける北斜面に足を踏み入れます。 当日のグループ間の心理には親近感(Familiarity)や承認(Acceptance)、エキスパートの後光効果(Experts Halo)によるヒューマンエラーがみてとれます。すなわち、スキー場近くの勝手知ったるメジャーな撮影スポットへの親近感からくる油断。憧れのフォトグラファーとの初めての仕事で良い作品を残したい、認められたいという思い。自分より経験豊富な2人への根拠なき信頼。こうしたヒューマンファクターによって、安全への錯覚(false sense of security)が起こり、数々の警告サインはスルーされました。彼女は盲目(Blind Spot)状態にあったと振り返っています。 よくあるシナリオですが、それだけに誰の身にも起きることです。FamiliarityやAcceptanceを自己診断する手法として、FACETS(こしもざらめ)と呼ばれるヒューマンエラーの簡易チェックリストがあります。エアバッグを装着していても、… Read more

12 30, 2013

エアバッグユーザーの死亡事故例

Room #3 Case Study Skier Accidental Near Revelstoke Mountain Resort カナダの雪崩事故から学ぶエアバッグの正しい着用の重要性 by トロイ・リーヘイ [訳者注:本記事はカナダ雪崩協会が発行する季刊誌The Avalanche Journal2013年秋号の掲載記事「Case Study: Skier Accidental Near Revelstoke Mountain Resort」の翻訳です。カナダ雪崩協会のご好意により掲載できました] 青点が亡くなったスキーヤー(下の青点が埋没地点)。赤線が登りのトレース。ピンク線がスキー場の境界線 写真:Troy Leahey このケーススタディでは、2013年2月22日カナダBC州レベルストーク・マウンテンリゾートからアクセスできるバックカントリーにおいて、スキーヤーがトリガーとなった雪崩事故を取り上げる。グループは5人の若い男性で、全員がレベルストークで過ごす初めてのシーズンだった。雪崩に巻き込まれたのは3人である。内2人が部分埋没した。亡くなったスキーヤー(スキー場のスタッフ)はエアバッグを着用していたが完全埋没している。高さ約40cmの破断面をもったサイズ2のスラブ・アバランチで、2月初め形成された表面霜が弱層となった。 事故分析はカナダ雪崩協会の雪崩対策プログラムやリスク削減に取り組む他業界の中で、長い間重要なパートを占めてきた。事故後にしたり顔で解説したり、人為的なミスを指摘することは容易である。しかし今回の事故で円滑に行われた救助活動の検証も事故分析の中で重要だと考えている。そこには学ぶべきものがあるからである。 この事故に私はいろいろな立場でかかわった。レベルストーク捜索救助隊の一員として、事故翌日の遺体運搬作業にバック・コリガンやライアン・ブラーと共にたずさわった。グループのひとりが身につけていたヘッドカムの映像で実際の救助シーンを見る機会もあった。その映像を使って、カナダ騎馬警察隊の地元担当官や現地検死局の代表者に事故内容を説明することができた。事故直後のリアルな記録映像は厳粛な気持ちにさせるに十分だったが、興味深い場面もあった。救助活動での各行動は、本誌の大部分の読者なら理解できるものである。だがバックカントリースキーを知らない事故調査官には説明や解釈が必要とされたからである。検死局への報告のために、雪崩が起きた場所の特定や当日の行動について、パーティーの生存者数名に聞き取り調査も行った。 犠牲者やグループのメンバーたちの友人や同僚のために設けられたレベルストーク・マウンテンリゾートでの報告会を手伝うこともした。当日のスピーチは困難を極めた。不条理な現実に直面する従業員や友人に事故の詳細を話をしても良いものか、とスキー場の社長に問われた。事故を理解することは、何が起きたのか知ることができ、気持ちにも区切りがつく。そう答えるしかなかった。グループが犯した明らかなミスはつとめて率直に話したかった。教訓が得られるからだ。また救助作業にあたったメンバーを賞賛し、彼らの自信と自尊心を回復させたかった。重点的に話した項目は以下の通りである。 グループのミス 雪崩リスクの高い地形の選択 当日の雪崩予報の雪崩危険度はアルパインと森林限界で「High」となっていた。グループが滑走に選択した険しい地形は明らかに間違いだった。5人のメンバーの特徴は、若い男性、攻撃的なメンタリティ、未熟なバックカントリー経験など、雪崩死亡事故の統計でよく見られるパターンである。亡くなったスキーヤーは前日に同じ場所を滑っており、仲間を引率する自信を深めていた。犠牲者は何度もこのエリアを滑っていたが、事故が起きるまでエリア一帯の積雪の大部分は安定した。 未熟な雪崩知識 シーズン中はじめて顕著に現れた表面霜の層だった。カナダではじめての冬を過ごすドイツ人の若者にとって、この種の弱層の扱いに不慣れだったかもしれない。カナダ雪崩センターの雪崩予報は注意を発していた。だが最後には、若さ、自信過剰、スティープパウダーへの欲求がこのギラギラ光る重要な情報をはね退けてしまった。 お粗末なグループマネジメント 先に登っていた3名全員が雪崩に巻き込ま… Read more