11 01, 2013

juxtapose

Room #1 DARK ROOM スキーヤーの知覚を補完するグーグルマップのアート by 稲葉直幸 juxtaposeと名付けられたこの不思議な画像は、ベルリン在住のアーティスト、ダニエル・シュワルツさんがグーグルマップ上から切り出した衛星写真を並べたものである。一枚の画像の中に2つの風景が混在するが、よく見れば地続きになっており、同一地点だと分かる。 シュワルツさんによると、こうした現象はグーグルマップの画像データベースの更新タイムラグによって生まれるという。グーグルマップは古くなった衛星写真のデータを随時更新しており、アルゴリズムが更新の日時やサイクルを制御している。同一地域内で更新時期にズレが生じると、撮影時期が異なる画像が一時的に混在する。結果、季節や気候の影響を受けて変化した大地の対照的な姿が並列して現れる。 ある日グリッド上の荒野を天上から神の心持ち眺めていたシュワルツさんは、偶然この現象に遭遇した。不完全なアルゴリズムに従い不自然な並列画像は、あるとき突然出現し消滅する。データベース更新の時期や対象エリアはユーザーには知らされておらず、地上のデジタルアートは人知れず生まれ消えていく。 アーティストの知覚を刺激され、テクノロジーのエラーの痕跡をたどる冒険がリビングルームで始まった。一週間かけて世界中の僻地を(バーチャルに)旅して周り、これらの画像を発見した。作品はグーグルマップから直接切り取られたもので、画像調整は加えていないという。 「テクノロジーはどのようにして僕たちの時間、空間、場所に対する見方を変えるのか。グーグルマップのいたずらが生み出したこれらの画像は問いかける」とシュワルツさんは言う。 juxtaposeを見るときの驚きは、大地の豊かな表情にある。スキーヤーにとってこの劇的なコントラストは、新雪に覆われた斜面の穏やかな姿と雪崩れた後の凶暴な姿を想起させる。これから滑る斜面にも暴力的な変化が潜んでいる。スキーヤーはその暴力性をピットチェック等で事前に認識できても、juxtaposeのように視覚化できない。不可視の暴力を正しく恐れることができず、積雪の安定性や自分の技術を過信して滑り込む。 知覚できなくとも、想像力によって雪崩れるさまを思い描き、震えおののくことはできる。人間の作業を補完するアルゴリズムが生んだjuxtaposeのアート(芸術)は、真夏のスキーヤーの想像力を刺激する。恐怖を知覚する補完アート(技術)として。 写真/ danielschwarz.cc WHITE ROOMのテキストは クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。… Read more