12 30, 2013

電動ファン式エアバッグJetForce

Room #3

Gear

エアバッグ市場に旋風を巻き起こす革新的エアバッグの機能

by 稲葉直幸


不意打ちジェットストリームアタック

この秋、かねてから噂されていた電動ファン製の雪崩エアバッグの正体が突如明らかになりました。ポピュラーサイエンス誌によって、ブラックダイヤモンドから2014年秋に発売される予定のJetForceは充電式バッテリーを使った電動ファンでバルーンを展開する全く新しいタイプのエアバッグと報じられたのです。

その後、いち早くJetForceの独占レビューを載せた老舗ブログWildsnowのサーバーが一時ダウンするなど大きな注目を集めました。これまでのエアバッグの運用上の大きな欠点、すなわち圧縮ガスの再充填と航空輸送の問題を克服する革新的な機能をもつからです。

国内での販売時期は不明ですが、圧縮ガスカートリッジを使用する従来製品の障壁である高圧ガス保安法の規制をクリアする必要がないため、来季からの販売も期待されます。

12月の時点でメーカーの公式アナウンスはありませんが、10月にコロラド・スノー・アバランチ・ワークショップで開発者によって発表された情報を以下にまとめました。


機能面

複数回展開
満充電の状態で雪上なら4回膨張が可能(室温なら6回)。ツアー時にちゅうちょなくトリガーを引くことができます。-30°Cの極寒コンディションでも最低1回は膨張可能。

トリガーにはバルーン展開の起動とは別にシステムのオン・オフのスイッチがあり、誤作動の防止に役立ちます。仮に誤作動を起こしても複数回展開できることは画期的です。

起動は従来型と同じくトリガーを引いて行います。トリガーハンドルにはLEDインジケータがあり、起動可能な残回数が表示されます。

電動ファン出力
60,000RPMで回転する小型ファンはコンピュータ制御され、トリガーを引いた後以下の通り作動します。

  • 0-9秒:強制出力
    
100%の出力でファンが回転。3.5秒で200Lのバルーンが完全膨張。

  • 10-60秒:アクティブ・パフォーマンス

    雪崩に流されている時間帯を考慮し、50-100%の間で出力して完全膨張を維持。

  • 1-3分後:膨張維持

    20秒間隔で3秒間フルスピードで出力。雪面上に出た場合、膨張を維持をすることで救助者による発見を容易にします。

  • 3分後:エアの自動排出

    自動的にファンが逆回転し、バルーン内の空気を放出。部分埋没あるいは完全埋没した場合、萎んだバルーンの周りにエアポケットが作られる可能性があります。埋没を免れた場合でも素早い再パッキングに役立ちます。

空気漏れ対策
ひっかきに強いシリコンコーティングされたナイロン製バルーンを採用。破れた場合、エアを送り続けることで膨張を保ちます(最大約20cmの傷まで膨張可能)。従来の製品よりもツリーランに有利とまでは一概にいえませんが、革新的な機能であることは間違いありません。


運用面

充電式システム
ラップトップで使われるタイプのリチウムポリマー電池を使用。圧縮ガスを充填するカートリッジが不要になり、再充填のコストがかかりません。充填サービスショップに行く手間も省けます。また航空輸送の際の煩雑さからも解放されます(ただしワット時定格量160Whを超える電池だと危険物扱いになる可能性があります)。

ゼロコストのテスト展開
テスト展開を気軽に行えることで、展開練習を反復できます。(トリガー練習の重要性は別記事「明日に向かって撃て!」をご参照ください)

エラーの自己診断
電子機器の故障を診断するプログラムにより不意の展開失敗に備えます。


想定されるリスク

電子機器を多用することから、吹雪や極低温下での氷結や雪崩による衝撃、あるいは滑走時の断続的な振動などによる故障が想定されます。厳しい環境で展開テストを繰り返して開発しているとはいえ、新しいテクノロジーには大きなリスクがつきものです。

Black Diamond Halo 28 JetForce
重量:約3,36kg

予定価格:$960


稲葉直幸
エアバッグの重さが気になる年齢になったものの、エアバッグ依存症から抜け出せないこの頃。
スキーヤー的に今年度のベスト映画は「ゼロ・グラビティ」。刹那の無重力を体感する術をもつスキーヤーなら必見!酸欠状態でエアロックに飛び込み、息苦しさから解放される主人公。
雪山でも絶対に味わいたくない瞬間をエア残量100%の状態で体験し、エアバッグ依存症を克服する決意をする。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
WHITE ROOMのテキストは クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。

 

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Author: Naoyuki Inaba
URL: http://whiteroomski.com/articles/03-jetforce
Tags: #Gear #03

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